
不老不死の技術が一般化してから約500年。この世界はいま、想定外すぎる社会問題に直面している。
そう、“終わらない老後”による年金財政の圧迫である。
中央年金管理局が先日発表した報告によると、年金基金の残高が過去最低を更新したという。原因は明快だ。不老不死市民の増加である。
そりゃそうだろう、と記者は思った。だって死なないのだから。
従来の制度設計では「だいたい数十年受給したら人生終了」という前提だった。しかし現在は平均受給期間が伸びに伸び、200年は序の口、長い人では900年超えもいるという。もはや老後という概念が老後していない。
編集部調べでは、年金受給者の約3割が受給歴300年以上。「年金ベテラン層」と呼ばれているらしい。ベテランって何だ。
実際に街で話を聞いた。不老不死歴620年の男性はこう語る。
「若い頃は“長生きは得だ”と思って不老処置を受けたんですよ。まさか年金側が先に悲鳴を上げるとは」
いや本当に。
これを受け行政も対策を打ち出している。
代表的なのが「受給上限500年ルール」。500年を超えると年金が“長寿感謝金”に切り替わり、支給額が徐々に減る仕組みだ。
さらに最近導入されたのが「一度くらい人生リセット推奨制度」。記憶を部分初期化すれば“精神的には若者”とみなし、支給額を調整するという。なんだその力技は。
年金窓口の職員は疲れた様子で話す。
「“まだ生きてますけどダメですか”って言われましても…制度が追いつかないんです」
そりゃそうだろう。
一方で市民側にも言い分はある。「払う時は数百年払い続けた」「元は取らせてほしい」という声は多い。確かに900年積立して1000年受給するのは、もはや投資商品である。
専門家は「制度が“寿命有限モデル”のままだったことが問題」と指摘する。つまり設計ミスだ。壮大な。
なお一部では「一定年数ごとに一度だけ仮死状態に入ると受給リセット」という案も出ているが、利用者からは「寝て起きたらまた書類手続き地獄」と不評だという。気持ちは分かる。
不老不死は夢の技術だったはずだが、どうやら社会保障には悪夢らしい。
長生きもほどほどが一番――などと言ったら怒られそうだが、年金窓口の行列を見ると少しだけそう思ってしまう。
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